19時25分に田嶋は大井町駅に到着した。歩いてすぐなので間に合う時間だ。
少し前の方に見たことのある後ろ姿があり、浅川がいそいそと店に向かっていた。同じ電話に乗っていたようだ。少し早足で浅川を追いかけるが、浅川も急いで歩いている。結局、お店の前で追いついた。
「おーっす」
「おお、田嶋。同じ電車だったのか」白い歯を出しながら浅川が笑う。日に焼けた顔に人のよさそうな笑みがこぼれる。
「島田、梶、村尾は連絡あったか?」と田嶋がスマホを確認しながら聞く。
「いや、ないな。ちょっと待つか」浅川はスマホを触りながら、お店の前の列に並んだ。残りの3名にメッセージを送ったようだ。
その時、後ろから声がした。
「悪い。お待たせ」
梶が悠々と歩いて来た。童顔で、髪を真ん中に分け、シルバーフレームの眼鏡を掛けている。通勤時はリュックを背負っている。かなりやせていて、スーツはいつも大きめに見える。梶は、新入行員時代とあまり見た目は変わらなかった。はっきり言って標準的すぎて目立たないサラリーマンだ。仕事も総務部だ。他の部署からは、何をやっているか分からない。
どうやら今日はこの3名で丸八とんかつ店に入ることになるらしかった。