事実はケイザイ小説よりも奇なり

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帝國銀行、人事部99

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 旧Yの神奈川における閉鎖店舗は、基本的には売却することになった。主に親密な不動産会社に声をかけ入札していくことになる。

 銀行の店舗は好立地の場所に存在していることが多く、不動産としての価値は高い。よって、銀行は業績が厳しければ、店舗を不動産賃貸できれば高い収益が得られるはずだ。しかし、銀行は簡単に不動産の賃貸ができない。

 銀行は銀行法12条により他業が禁止されている。この法律の趣旨は、資金力がある銀行が強力な金融力を背景として一般事業に進出した場合、公正な競争が阻害されるおそれがあること、すなわち銀行に産業界を支配させないようにすることだ。さらに、現在は、銀行を異なる業種のリスクから切り離し健全性を維持することに主眼がおかれている。

 銀行の行動をしばる金融庁の監督指針には以下のような記載がある。

<監督指針>
グループ会社以外の者に対し事業用不動産の賃貸等を行わざるを得なくなった場合においては、以下のような要件が満たされていることについて、銀行自らが十分挙証できるよう態勢整備を図る必要があることに留意すること。なお、国や地方自治体のほか、地域のニーズや実情等を踏まえ公共的な役割を有していると考えられる主体からの要請に伴い賃貸等を行う場合は、地方創生や中心市街地活性化の観点から、二.については要請内容等を踏まえて判断しても差し支えない。

イ.行内的に業務としての積極的な推進態勢がとられていないこと

ロ.全行的な規模での実施や特定の管理業者との間における組織的な実施が行われていないこと

ハ. 当該不動産に対する経費支出が必要最低限の改装や修繕程度にとどまること。ただし、公的な再開発事業や地方自治体等からの要請に伴う建替え及び新設等の場合においては、必要最低限の経費支出にとどまっていること

ニ. 賃貸等の規模が、当該不動産を利用して行われる固有業務の規模に比較して過大なものとなっていないこと

※ 賃貸等の規模については、賃料収入、経費支出及び賃貸面積等を総合的に勘案して判断する(一の項目の状況のみをもって機械的に判断する必要はないものとする。)