田嶋は伊東と共に処分案の見直しを部長の山中と協議した。人事担当役員および頭取と山中が更に協議したが、現在の帝國銀行の規模および内部統制の仕組みの構築状況からして、現在の処分案から変更となることはなかった。但し、社外取締役から何からの指摘を受ける可能性はある。また、監査部から人事部に対する責任を追求される怖れも残っており、人事部としては気が抜けない状況には変わりなかった。
事件発覚から2週間後に帝國銀行は今回の横領事件について被疑者は逃走中のまま、事件の概要を発表した。
マスコミは大々的に事件を取り上げた。何と言っても、銀行はマスコミに叩かれやすい。
『エリート銀行員の闇』
『帝國銀行、信用失墜』
『銀行の落日』
『横領事件は銀行の古い体質にある』
『預金者は銀行を信じるな』
『高齢者を狙う銀行』
『老後の楽しみを奪われた高齢者達』
様々なタイトルで記事が書かれ、ワイドショーが報じた。