事実はケイザイ小説よりも奇なり

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帝國銀行、人事部51

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 その後、山中からの音沙汰はしばらくなかった。

 伊東も田嶋には何一つ話をしてこない。田嶋は焦燥感に駆られながら、業務を行うしかなかった。夕方になると暇になってしまうため、調べたかった様々な情報をネットで収集している。例えば、世の中の企業において変形労働時間制を採用している企業の割合や、テレワークを導入している企業数の割合は政府の統計で調査されているはずだった。

 帝國銀行では現時点で導入されていないが、導入を検討すべき施策の一つが勤務間インターバル制度だ。

 日本では、以前から問題になっている長時間労働の是正や各労働者の健康確保などの観点から、労働時間等設定改善法という法律の中に「始業から就業までの間に一定の間隔を置く」という努力義務規定の法律が制定されている。これを完全に制度化したのが勤務間インターバル制度だ。欧州では古くから導入されていて、終業から始業まで11時間を開けるというのがEUの決まりになっている。歴史的にみて長時間労働がはびこってきた銀行には、勤務間インターバル制度は有効なはずだ。帝國銀行も導入するべきか、その課題とメリットについて田嶋は丹念に調べていく。使うことがなかったとしても準備しておくことに意味はある。そんなことを考えながら更に2日が過ぎていた。