事実はケイザイ小説よりも奇なり

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帝国銀行、人事部42

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「はい。認識しています。岩井さんの言動は業務に関しての指導であり、パワハラで問題になるような行動には該当していません。ただ、指導時間が長過ぎるというのは気をつけて頂いた方が良いかもしれません」

「分かったわ。でも、これじゃあ、人事部から責められる必要はないわよね。最近は、人事部もナイーブ過ぎるのよ。何でもパワハラになってしまうから、指導も出来ないわ」

「確かに人事部が弱腰であるというご指摘は受け止めます。しかし、世間基準のパワハラは法律上のパワハラとは異なります。SNSで情報が拡散する時代には、当行も一気にパワハラ企業、ブラック企業と世間から認定される可能性があります。銀行は信用、イメージが大事ですので、人事部としては最大限の注意を払っています。どうかご理解をお願いします」

「それは分かったわよ。でも、もしかしてパワハラで釘を刺すためだけに私を人事部に呼んだの? あなたのところの部長のやまぽんにクレーム言っても良いんだけど」岩井は吐き捨て、椅子から立ち上がった。『やまぽん』は執行役員人事部長の山中であり、田嶋の上司にあたる。

「人事部にも面子というものがあります。指導についてはどうかパワハラの疑いを持たれないようにご対応をお願いします。銀行は人が全てですから」

 岩井の後ろ姿に田嶋は声をかけた。岩井は面倒臭そうに手を上げ、部屋を出ていった。