「岩井支店長の言動とはどのような点が問題だと思われますか」嫌な予感はしていたが、田嶋は真正面に聞いた。
「渉外担当の真島梨花さんへの言動は行き過ぎていると思います。詳しい話は山内さんからお聞きになった方が良いでしょうけど」
「この後に山内さんからもお話を伺うことになっています。それでも、もう少し教えて頂けないでしょうか」
「申し訳ないのですが、私からは何とも言えません。でも、指導や期待という理由で、真島さんだけに大量の仕事を振り、かなり負荷をかけています。例えばお客様への電話セールスについて、真島さんだけ残業をさせて延々とお客様に電話をさせていたりします。この前は、支店中に響き渡る声で真島さんを1時間叱っていました。ずっと立たせ続けたままです。但し、話の内容は完全に仕事のことでした。パワハラと言えば人格を責めるような言動だと思うのですが、岩井支店長の発言は人格否定のようなものはありません」内田は絞り出すように言葉を繋いだ。
「そうですか。真島さん本人は何か言っているんですか」
「いえ、私は知りません。同じ課ではないので、あまり会話をする機会がないんです。でも、ここしばらくは肌が荒れているように感じます」
「肌ですか」
「そう、肌です。女性は、様々な問題が肌に表れます。相当につらいんだと思います。あんなに透明感がある肌の感じだったし、性格も明るかったんですが」
「分かりました。また何か思い出した事象があったら教えて下さい。メールだと文面が残り不安でしょうから電話でお願いします。この番号です。内線が周りに聞かれる恐れがあるならば、外線番号でも大丈夫です。電話代がかかるならば、お電話頂いた時に折り返すように伝えて下されば、直ぐにこちらからお電話するようにします」
このようにして、内田との面談は終了した。非常に濃い面談だった。