久しぶりに平野は自宅にいた。今日はゴルフもなく、単なる休みだ。先週、桜のピークを迎え、今は葉桜となっている。
平野はくつろぎながら今のソファで妻と話をしていた。テーブルには妻が最近はまっている中国茶があった。
「僕は地面という言葉が嫌いだよ。」
「そりゃ、今回の事件があったから当たり前でしょ。私なんて地面師という言葉を初めて聞いたわ。」
「いや、そんなことじゃないんだ。小学校の嫌な思い出なんだよ。」
「あら、そんな話は聞いたことがないわね。どんな話?」
「地面ってフリガナが特殊だと思わないか。土地って『とち』じゃないか。地球も『ちきゅう』だろ。だから、小学校の時のテストで『地面』の読み仮名を書く問題があった時に『ぢめん』って書いたんだよ。そしたら不正解にされてさ。納得いかないくて、先生に文句を言ったよ。先生は理屈じゃなくて、そういうものだから覚えろ、とだけ言っていた。子供だったからか、悔しくて、納得いかなくて。だからずっと覚えているんだよ。」
「そんなことがあったんだ。じゃあ、あなたは地面とは相性が悪いのね。」
「そうだよ。ハウスメーカーにずっと勤めてきたのにな。地面が嫌いなんだよ。」
(了)
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