事実はケイザイ小説よりも奇なり

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【2月19日報道①】(ヂメンシノ事件75)

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 大阪西天満の料亭にいた。

 平野は初めて会食を共にするお客様や話があまり盛り上がらない取引先との接待ではこの店を使っていた。

 この店は、オーソドックスで料理には面白味がない。当然、美味しいのだ。高い値段をとってるのだから当たり前だ。しかし、驚きは無い。

 むしろこの店の売りは女将のトークだった。

 どうしてこんなに会話に参加してくるのか分からないが、とにかくしゃべってくる。

 「今日入ったワインは、私も親しくさせて頂いているイタリアのワイナリーから送ってもらったもんです。大阪ではめったに飲めませんよ。絶対、今日のお料理に合うから、ワインはこれにして。お客さん、もし気に入ったなら帰りに包んであげるわ。」

 こんな感じで、しばらく一方的にしゃべっていくのだ。

 これを嫌がる客もいるだろう。

 ただ、平野は気に入っていた。

 何よりも、時間が潰せるのだ。接待先に楽しんで帰ってもらえるではないか。

 自分の性格がつまらないのは分かっている。

 宮城県出身で大学も東北学院大。長身で寡黙なため、怖いと言われる。

 会社人生では、仙台での営業が長かった。

 大阪の会社でありながら、関西のノリは持ち合わせていない。

 ボケも苦手だ。

 前会長からもお前はつまらないと言われ続けてきた。だから、信頼されたのもあるのだろう。寡黙なので軽くは見られなかった。

 そんな自分だから、会食の場で楽しんでもらうためには、人の力を借りるしかないのだ。

 平野がこの店を気に入っている理由だ。

(続く)

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ヂメンシノ事件