会見が始まったのは午後6時半。
会見には自身と新社長の木村の2名のみで臨んだ。
巨大住宅メーカーのトップ交代としては異例の対応だろう。
殺風景な何もない会見場だ。
金屏風もない。退任する会長もいない。住宅業界の顔であるカリスマ奥平の退任なのに記者会見も行わないのだ。
もちろん奥平には記者会見をすることすら伝えていない。今、余計なことを言われても困る。
目の前には報道各社のマイクやレコーダーが置かれている。
記者の座っている机も簡素なものだ。いわゆる会議室を使っていた。ホテルを手配するには時間が無かったのだ。
広報部長である中居のアナウンスが流れ始めた。
「それでは満水ハウス株式会社の記者会見を始めます。この度は皆様ご多忙の中、直前でのご連絡となってしまい申し訳ありません。まずはお詫び申し上げます。さて、記者会見の内容につきましては弊社代表取締役社長 平野よりお伝えさせていただきます。それでは平野社長よろしくお願い致します。」
まずは自分から口を開かなければならない。当たり前か。
(続く)
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