事実はケイザイ小説よりも奇なり

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【1月24日取締役会後①】(ヂメンシノ事件70)

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 取締役会終了後、奥平を別室に案内させていた。会長室に行かれると、メールを消されたり、大事な書類を処分される可能性すらある。会長室は入室禁止とし、私物は一切持ち出させないようにしなければならない。勝手に外部に連絡をされても困る。もちろん、事前に弁護士に法律上の問題が無いか確認済だ。木村に奥平への対応をしてもらっていた。自身が連れてきた弁護士を一緒につけておく。

 社長室に戻りながら携帯電話で広報部長の中居を呼び出す。

 「今すぐ社長室に来てくれ。用件はその時に話す。すぐだ。」

 一方的に告げてすぐに電話を切る。社長室に戻る前に、秘書室の前を通る。

 「成田さん。来てくれ。」そう秘書室の中に声を掛けながら、社長室に向かった。

 秘書の成田が、速足で追ってきた。成田には次々と指示を出さねばならない。社長室に入るとすぐに口を開いた。ただ、どうしても動揺していて気が静まらない。秘書の目を直接見ることが出来ないぐらい気が急いていた。

 「会長の部屋は立ち入り禁止だ。警備員に連絡を。」

 「会長の車も使用停止だ。運転手に連絡してくれ。」

 「会長の使っている会社の携帯電話は機能をストップできるなら、やってくれ。」

 「すぐに国際事業の村田専務を呼んでくれ。草薙副社長と木村常務も同席させる。すぐに手配を。」

 「それから・・・・」

 違和感を感じる。

 秘書の成田の声が聞こえない。自分が指示を出している時、いつもならば指示を復唱するか、相づちを打つ。

 目を上げると秘書の成田が怪訝そうな顔つきで、机の前で直立不動で立っている。

 何か言いたそうだが、言えないという面持ちだ。

 そこでふと気づいた。

(続く)

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ヂメンシノ事件