事実はケイザイ小説よりも奇なり

経済を、ビジネスを、小説を通じて学んでみる

【1月24日取締役会⑥】(ヂメンシノ事件66)

f:id:naoto0211:20190505142249j:plain

 「会長。方向性は決まりました。」草薙の声が響く。そして言葉を続けた。

 「どうですか。議長としてお話をさせて頂きますと、ご自身で辞任なさるのはいかがでしょう。会長、退き時ですよ。」

 「は。何を言うてるんや。自分等、寝ぼけてるんとちゃうんか。平野に何を吹き込まれたんや。俺は辞任はせんぞ。首を切れるもんなら、やってみい。おい、草薙も議長とか引き受けるなんて、裏切ったんか。そういえば、お前は平野の参謀役やったもんな。」奥平の声がどんどん大きくなっていった。いつもの余裕があり、オーラがある奥平がそこにはいなくなったようだった。

 「会長。そうは仰いますが、勝ち目はないんですよ。さっきご覧になった通りです。私は裏切ったんじゃないですよ。取締役としての責務を果たしただけです。辞任頂けませんか。」

 奥平は暫く草薙を睨み続けていたが、平野の方に目を向けてきた。目が少し血走っているように見える。「こら、平野。お前、さっきから黙っとるが、何か言うことはないんかい。独断専行ってなんやねん。五反田の詐欺事件に引っ掛かったのは自分やろうが。」

 頃合いだろう。やるか。

(続く)

<今すぐに全文を読みたい方はこちら>


ヂメンシノ事件