「会長の代表取締役および会長兼CEOの解職を提案する。」ここまで一気に声を発した。取締役会の空気が一瞬にして変わった。
「まて、何を言っている。私の解職だと。」奥平が焦った声を出した。奥平が慌てた声を出したところを平野はほとんど聞いたことが無い。自分の行動が奥平に大きな影響を与えたのだ。平野は短い時間で満足感を覚えた。ただし、勝負はこれからなのだ。
「奥平会長は、これまでわが社の発展に多大な貢献をなさってきました。しかし、そろそろ後進に道を譲る時期に来たのではないでしょうか。」
「おい、平野。何を言ってるんや。」
「しかし、ここしばらくは独断専行が過ぎるのが目につくようになりました。取締役会を改革するためにも会長には退任頂きたい。これが社長である私からの議案です。議長。決を取って頂きたい。」
「分かりました。皆さま宜しいですね?それでは議事を取りましょう。平野社長から示された会長の解職案に賛成の取締役は挙手願います。なお、会長は利害関係人のため挙手に参加できません。それではどうぞ。」
次々と手が上がる。
自分も手を上げた。
・・・・・・6名だ。議事に参加できる取締役10名のうち、過半を超えた。
不賛成の取締役は動かない。いや、動けないか。急転直下とはこのようなことを指すのだろう。
「ちょっと待てと言ってるやろ。なんやこれは。どういうことや。平野、お前、何をしたんや。」
取締役達の目は焦点を結んでいないようだ。誰もが会長から目をそらしている。
(続く)
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