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【1月24日取締役会④】(ヂメンシノ事件64)

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 会議室に入った。まず、常務の木村と目が合う。額が汗をかいているようだ。少し顔も赤いか。副社長の草薙は左の眉が上がったままだ。そして、奥平はこちらをみない。

 無言の中、着席した。

 「社長の退任議案につきましては否決されました。」

 草薙が平野に説明する声が響く。

 一瞬、目の前が暗くなった。

 そうか。

 ・・・・そうなのか。

 「議長。こちらからも議案を出させて頂きます。」自分の発した声が、第三者の声のように耳に響いた。

 「まず、議長の交代を要請します。議長は草薙副社長にお願いしたい。」

 会長がこちらを見た。驚いているのだろう。目がすっと細くなった。しかし、取り乱した風もなく、口を開いた。

 「まあ、良いでしょう。議決を取ります。私の議長交代に関する議案に賛成の取締役は挙手をお願いしたい。」

 次々と手が上がった。賛成六名。奥平の目が大きく見開かれた。平野は間断なく言葉を続けた。「これで議長は草薙副社長となりました。では議長、議事進行をお願いします。」

 「承知しました。それでは議事を行います。議案を提示したい方はいらっしゃいますか。」

 「社長である私から提案したい。」

 「平野社長、どうぞ。」

(続く)

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ヂメンシノ事件