会議室に入った。まず、常務の木村と目が合う。額が汗をかいているようだ。少し顔も赤いか。副社長の草薙は左の眉が上がったままだ。そして、奥平はこちらをみない。
無言の中、着席した。
「社長の退任議案につきましては否決されました。」
草薙が平野に説明する声が響く。
一瞬、目の前が暗くなった。
そうか。
・・・・そうなのか。
「議長。こちらからも議案を出させて頂きます。」自分の発した声が、第三者の声のように耳に響いた。
「まず、議長の交代を要請します。議長は草薙副社長にお願いしたい。」
会長がこちらを見た。驚いているのだろう。目がすっと細くなった。しかし、取り乱した風もなく、口を開いた。
「まあ、良いでしょう。議決を取ります。私の議長交代に関する議案に賛成の取締役は挙手をお願いしたい。」
次々と手が上がった。賛成六名。奥平の目が大きく見開かれた。平野は間断なく言葉を続けた。「これで議長は草薙副社長となりました。では議長、議事進行をお願いします。」
「承知しました。それでは議事を行います。議案を提示したい方はいらっしゃいますか。」
「社長である私から提案したい。」
「平野社長、どうぞ。」
(続く)
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