事実はケイザイ小説よりも奇なり

経済を、ビジネスを、小説を通じて学んでみる

【最初の電話】(ヂメンシノ事件2)

 平野のデスクの電話が鳴った。

 「社長。」

 秘書の声が響く。

 いつもの通り、はっきりと聞きやすい声だ。無駄なことを一切話さない社長秘書の成田からだった。もう少しくだけても良いと思うが、一切スタンスは変えない。もう秘書になってから5年は経つのではなかったか。

 「マンション事業本部の真中常務からのお電話ですが、取り次いでよろしいでしょうか。」

 「ああ、繋いでくれ。」

 一瞬の間の後、少しハスキーな初老の男の声が聞こえた。

 「真中ですが、少しご相談したいことがあります。今、お時間を頂いてもよろしいでしょうか。」

 「こうして電話に出ているんだから問題ないですよ。どうしました?」
 「前向きに購入を検討したい大型物件がありまして、社長にご相談したかったんです。場所は五反田。海猫館という名前をご存知でしょうか。」

「海猫館。どこかで聞いた名だな。」

(続く) 

<今すぐに全文を読みたい方はこちら>


ヂメンシノ事件