2020-01-01から1年間の記事一覧
田嶋のフルネームは田嶋貴男だ。タジマタカオ。人気のあった渋谷系バンドであるオリジナルラブのボーカルと漢字は一文字違い、読み方は一緒だ。一時期、オリジナルラブから派生して、あだ名を『ラブ』もしくは『ラブっち』と呼ばれていたことがある。田嶋は…
人事部に戻るとすぐに直属の上司である副部長の伊東に今回の面談の報告を行う。一通りの内容を聞いた後に伊東が口を開いた。 「田嶋さん、甘いですね。その木村という行員、総合職でしょう? 別に遠隔地に飛ばしても良いですよ。女性総合職に甘い顔をしてい…
木村が会議室から出ていくのを見守る。その後ろ姿に最後に声をかけた。 「私は、銀行は人が全てだと思っています。これからもご意見を気軽にください」 木村に聞こえたかは分からない。扉が閉まった瞬間に、パイプ椅子に座り直す。 『疲れた』田嶋の率直な感…
「ありがとうございました」かぼそい声で木村が頭を下げた。顔を上げた時には、瞳に少し光が感じられた。 「田嶋さんのように法律にまで言及して説明してくださった方はいませんでした。さすが人事のプロなんですね」 ここからがだめ押しだ。田嶋は優しい口…
木村の白い顔は、今や全体が赤く紅潮していた。左目からも涙が溢れてきた。それでも田嶋は話し続ける。 「ザ・ウィンザー・ホテルズインターナショナル事件という判例があります。これは飲み会においてパワハラを認定した事件ですが、上司が極めてアルコール…
ここは帝國銀行目黒支店の殺風景な会議室だ。床はベージュかグレーか良く分からない色のタイルが敷いてあり、何かを引きずった跡があちこちに見られる。壁際には、折り畳み式の椅子とテーブルが畳んで並べられている。田嶋は木村と広い会議室で向き合ってい…
「納得いきません」 目の前で、新人の女性行員が涙目で抗議している。 「なぜ、私が支店の雰囲気を悪くしていると言われなければならないんですか。支店の飲み会は業務ですか。強制的に参加しなきゃいけないなんておかしいですよね」 向かい側に座っている田…
読者の皆様へ コロナ禍の中、少し時間が出来たので小説の連載を始めようと思います。 私が小説を書くのは二作目で、一作目は泣かず飛ばずでしたが、良い経験でした。 新たな小説のタイトルは「帝國銀行、人事部」です。 作ってみた表紙のイメージは以下です…
筆者は、クラウドファンディングで小説の出版を目指しています。 残り27日で987冊の申し込みがないと、チャレンジは失敗となります。 銀行員がクラウドファンディングを使うというのは、どうも自らの業務を否定しているような気がしますが、これも時代の流れ…
皆様へ この度、幻冬舎さんとCAMPFIREさんが合弁出資しているEXODUSさんから、小説出版のクラウドファンディングを実施することになりました。 (当初はもう少し早くスタートする予定でしたが遅くなってしまいました) 「ヂメンシノ事件」 - exodus このプロ…