事実はケイザイ小説よりも奇なり

経済を、ビジネスを、小説を通じて学んでみる

帝國銀行、人事部6

人事部に戻るとすぐに直属の上司である副部長の伊東に今回の面談の報告を行う。一通りの内容を聞いた後に伊東が口を開いた。 「田嶋さん、甘いですね。その木村という行員、総合職でしょう? 別に遠隔地に飛ばしても良いですよ。女性総合職に甘い顔をしてい…

帝國銀行、人事部5

木村が会議室から出ていくのを見守る。その後ろ姿に最後に声をかけた。 「私は、銀行は人が全てだと思っています。これからもご意見を気軽にください」 木村に聞こえたかは分からない。扉が閉まった瞬間に、パイプ椅子に座り直す。 『疲れた』田嶋の率直な感…

帝國銀行、人事部4

「ありがとうございました」かぼそい声で木村が頭を下げた。顔を上げた時には、瞳に少し光が感じられた。 「田嶋さんのように法律にまで言及して説明してくださった方はいませんでした。さすが人事のプロなんですね」 ここからがだめ押しだ。田嶋は優しい口…

帝國銀行、人事部3

木村の白い顔は、今や全体が赤く紅潮していた。左目からも涙が溢れてきた。それでも田嶋は話し続ける。 「ザ・ウィンザー・ホテルズインターナショナル事件という判例があります。これは飲み会においてパワハラを認定した事件ですが、上司が極めてアルコール…

帝國銀行、人事部2

ここは帝國銀行目黒支店の殺風景な会議室だ。床はベージュかグレーか良く分からない色のタイルが敷いてあり、何かを引きずった跡があちこちに見られる。壁際には、折り畳み式の椅子とテーブルが畳んで並べられている。田嶋は木村と広い会議室で向き合ってい…

帝國銀行、人事部1

「納得いきません」 目の前で、新人の女性行員が涙目で抗議している。 「なぜ、私が支店の雰囲気を悪くしていると言われなければならないんですか。支店の飲み会は業務ですか。強制的に参加しなきゃいけないなんておかしいですよね」 向かい側に座っている田…

新たな小説「帝國銀行、人事部」の連載を始めます!

読者の皆様へ コロナ禍の中、少し時間が出来たので小説の連載を始めようと思います。 私が小説を書くのは二作目で、一作目は泣かず飛ばずでしたが、良い経験でした。 新たな小説のタイトルは「帝國銀行、人事部」です。 作ってみた表紙のイメージは以下です…

なぜ小説出版を目指すのか

筆者は、クラウドファンディングで小説の出版を目指しています。 残り27日で987冊の申し込みがないと、チャレンジは失敗となります。 銀行員がクラウドファンディングを使うというのは、どうも自らの業務を否定しているような気がしますが、これも時代の流れ…

小説出版を目指しクラウドファンディングをスタートしました!

皆様へ この度、幻冬舎さんとCAMPFIREさんが合弁出資しているEXODUSさんから、小説出版のクラウドファンディングを実施することになりました。 (当初はもう少し早くスタートする予定でしたが遅くなってしまいました) 「ヂメンシノ事件」 - exodus このプロ…

いよいよ小説出版のクラウドファンディングが始まります!

皆様へ いよいよ、幻冬舎さんとCAMPFIREさんが合弁出資しているEXODUSさんから、小説出版のクラウドファンディングを実施することになりました。 10月18日から募集開始する予定ですが、事前にお知らせさせて下さい。 camp-fire.jp https://camp-fire.jp/proj…

クラウドファンディングでの小説出版~募集ページの初稿完成~

先日お伝えしたクラウドファンディングによる小説出版について、改めてお知らせいたします。 (前回記事) クラウドファンディングExodus(エクソダス)に挑戦します! - 事実はケイザイ小説よりも奇なり 10月の中旬から募集を行う予定ですが、現時点では募…

クラウドファンディングExodus(エクソダス)に挑戦します!

読者登録を頂いている皆様、お久しぶりです。 この度、チャンスを頂き、クラウドファンディングにてEXODUSからの出版に挑戦することになりました。(サイトは以下)https://exodus.jp/ 現在、当ブログにて公開している「ヂメンシノ事件」を改訂して出版を目…

【ヂメン】(ヂメンシノ事件93/最終話)

久しぶりに平野は自宅にいた。今日はゴルフもなく、単なる休みだ。先週、桜のピークを迎え、今は葉桜となっている。 平野はくつろぎながら今のソファで妻と話をしていた。テーブルには妻が最近はまっている中国茶があった。 「僕は地面という言葉が嫌いだよ…

【井澤④】(ヂメンシノ事件92)

井澤に平野という親戚はいない。親戚で『恵』と名前のつく女性もいなかった。ただ、どこかで見た名前だ。『平野・・・・?恵・・・・?』誰だろう。包みを開けながら思い出そうとする。最近、年を取ったせいか人の名前が思い出せなくなっている。 包みを開け…

【井澤③】(ヂメンシノ事件91)

翌日の土曜日は少し曇り空だった。昨日はかなりの量のお酒を飲んでいたはずだったが、井澤は朝6時に目が覚めた。いつもならば五時台には目覚めているため、いつもよりは遅い。それでも二十代、三十代の時のようにいつまでも寝ることはできなかった。朝は自…

【井澤②】(ヂメンシノ事件90)

おかみさんがナムルや前菜を運んできた。皿を並べながら、西川のお箸を左側に置き換えた。おかみさんも西川が左利きだと覚えていてくれたのだろう。 生ビールで乾杯した後に、西川が口を開いた。 「酔う前に言っておく。会社辞めるなよ。」目を合わさず、た…

【井澤①】(ヂメンシノ事件89)

金曜日の夜、井澤は会社の同期と赤坂見附の韓国料理屋で待ち合わせした。 満水ハウスは新入社員を数多く採用するが井澤の年齢まで残っている同期は少ない。ほとんどの同期は支店の営業に配属されるが、ノルマが厳しく三年以内にかなりの割合が辞めていた。 …

【3月スピーチ③】(ヂメンシノ事件88)

「どうか、どうか、満水ハウスに今一度力を貸して下さい。社員一人ひとりが力を発揮できればライバルとの競争にも生き残れます。少子高齢化も乗り切るのです。我々は住宅メーカーです。お客様の財産を、人生を守り、育んでいく家を作っているのです。ご承知…

【3月スピーチ②】(ヂメンシノ事件87)

今回の経営体制は、平野のワンマンではなく、集団指導体制とでも呼ぶべきものになった。誰かが突出して権限を持てば、その個人の『良心』に依拠した経営となってしまう。トップの暴走を止められるような経営体制を平野は目指したかった。そのため、取締役の…

【3月スピーチ①】(ヂメンシノ事件86)

「皆さん、新しく会長になりました平野です。今回、全社員向けに私の口から直接お話を伝えたいと思い、このような場を設けさせてもらいました。地方拠点の皆さんはDVDでの視聴となりますがお許し下さい。」 平野は大勢の前でのスピーチが苦手だ。奥平は得意…

【3月6日もう一つのプレスリリース②】(ヂメンシノ事件85)

このプレスリリースには、マスコミからは調査対策委員会の報告書全文を開示すべきだとの指摘もあった。もちろん奥平はマスコミに更にリークしていた。調査対策委員会の報告書には平野の責任が明記されてあると何度もマスコミに告発しているのだ。しかし、批…

【3月6日もう一つのプレスリリース①】(ヂメンシノ事件84)

分譲マンション用地の取引事故に関する経緯概要等のご報告 8月2日付で発表いたしました『分譲マンション用地の購入に関する取引事故につきまして』(以下、「本件」といいます。)に関し、社外役員による『調査対策委員会』の1月24日付調査報告書を受領いたし…

【3月6日プレスリリース】(ヂメンシノ事件83)

2月20日以降、様々なマスコミが満水ハウスのトップ交代をクーデターと報道した。奥平が様々なマスコミの取材を受けるため加熱していくのだ。 奥平に接触しようとしたが、個人の携帯電話には全く出なかった。顧問弁護士からは、相手は全ての通話を録音してい…

【2月20日朝刊⑤】(ヂメンシノ事件82)

明け方まで断続的に対応を検討し、プレスリリースの案文が出来たのは朝9時だった。 2月20日『代表者異動に関する一部報道について』 2月19日 18:02付、日本経済新聞電子版の「イブニングスクープ」を始めとする速報道で弊社代表取締役交代人事に関する報道が…

【2月20日朝刊④】(ヂメンシノ事件81)

「基本的には本人への警告を行い、このリークを止めさせたいが、事を荒立てたくはない。法務部長と相談して対応してくれないか。単純に取締役としての守秘義務への抵触で裁判でも勝てるだろうが、ご本人の性格を考えると、それぐらいでは黙らないだろう。」…

【2月20日朝刊③】(ヂメンシノ事件80)

会食終了後、社長車に乗り込んだ瞬間に中居に電話を入れる。 「中居部長。内容は確認した。満水ハウスとしての声明文を出そう。まずは案文を作ってくれ。草薙さんと木村新社長にも共有だ。そしてプレスリリース前には他の社内役員のみならず社外役員にも共有…

【2月20日朝刊②】(ヂメンシノ事件79)

どう考えてもこれは守秘義務違反ではないか、というのが平野の第一印象だ。 特に問題なのは、調査委員会が『執行の責任者には重い責任がある』と報告書に記載したこと、そして社外役員との会議で『全会一致で平野社長退任は妥当との判断が下されていたこと』…

【2月20日朝刊①】(ヂメンシノ事件78)

(ヂメンシノ事件 2月20日の朝刊で日経新聞が満水ハウスに関する記事を掲載した。ネットでの配信は19日だった。 『会長交代、実は解任』 戸建住宅大手、ハウスの2月1日付のトップ人事で、会長の退任の実態は解任だったことが明らかになった。 詐欺事件の責任…

【2月19日報道③】(ヂメンシノ事件77)

「会長。まずいことになりました。とりあえず本日はご自宅に帰るのはやめて下さい。ホテルは秘書に手配させます。」 「分かった。で、理由は。接待中だから手短に。」 「奥平相談役がトップ交代について日本経済新聞に話しました。先程、ニュース速報で記事…

【2月19日報道②】(ヂメンシノ事件76)

ちょうど、二本目のワインが空いたところだった。 するりと女将が入ってくる。どこかで盗聴してるんじゃないかと思うぐらい、飲み物が無くなるタイミングでやってくるのだ。これもプロの技なのかなと考えていたときに、胸のポケットに入れているスマートフォ…