事実はケイザイ小説よりも奇なり

経済を、ビジネスを、小説を通じて学んでみる

帝國銀行、人事部14

三井倉庫港運事件(最高裁第一小法廷平成元年12月14日)という裁判例が存在する。人事関係者か労働組合関係者ぐらいしか知らないだろう。判決の要旨は次の通りだ。 「ユニオン・ショップ協定のうち、締結組合以外の他の労働組合に加入している者及び締結組合…

帝國銀行、人事部13

ユニオン・ショップとは、会社側が、労働組合との協定であるユニオン・ショップ協定を締結し、組合員ではないものを解雇する義務を負うことを内容とする制度のことを言う。単純に言えば、ユニオン・ショップ協定というのは企業内に会社が公式に認定する唯一…

帝國銀行、人事部12

「この通達をご存知ですよね」山階が暗い声を出す。 「これを知らない人事部担当は無能と聞きました。田嶋さんは明らかに驚いた表情をなさっていましたから、やはり知っているのでしょうね」そう言って山階は微笑んだ。先程まで田嶋の目の前にいた銀行の中で…

帝國銀行、人事部11

山階が示したペーパーは昔の労働省が出した通達だった。内容は次の通りだ。 都市銀行等における「管理監督者」の範囲(昭和52年2月28日基発第104号の2) (1)取締役、理事等役員を兼務する者 (2)出先機関を統轄する中央機構(本部)の組織の長で、1. 経…

帝國銀行、人事部10

「私は、山階さんが、労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有していると思います。外為は海外とのやり取りですから、時間も海外支店に合わせる必要があると思います。そして、当行は主任調査役としての山階さ…

帝國銀行、人事部9

田嶋はイライラしながら、外見は神妙に首を縦に振る。しかし、山階は田嶋を見ていない。自分の世界に没頭しているようだ。 「残業代がつかない理由は、管理監督者は、自己の勤務において裁量の余地が大きいことから、労働基準法の適用を除外しても保護に欠け…

帝國銀行、人事部8

「田嶋さん。あなたは管理監督者がどのようなものか勉強しているのですか」 田嶋の目の前で、渋谷支店外為課の山階が怒気をはらんだ顔で話を続けている。 山階は外為課の主任調査役だ。入行して25年超のベテラン行員であり、半年前に渋谷支店に異動してきた…