事実はケイザイ小説よりも奇なり

経済を、ビジネスを、小説を通じて学んでみる

【登記却下】(ヂメンシノ事件18)

6月7日(水)に大きな動きがあった。 司法書士の荒井が、慌ただしく井澤のオフィスに訪問してきた。まだ夏にもなっていないのに汗だくだ。顔を拭うハンカチはタオルタイプのものだった。ラルフローレンのマークが入っている。色はピンクと紫の組み合わせだ。…

【物件引渡】(ヂメンシノ事件17)

物件の引き渡しは6月4日の日曜日だ。通常は平日に売買物件の引き渡し、売買代金の支払を行うものだが、今回は休日となった。 売主側の希望だ。銀行での振込と着金が確認出来ないから、通常は休日には物件の引き渡し、資金決済をしないのが業界の一般常識だ。…

【最終内覧②】(ヂメンシノ事件16)

内覧は短時間で終了し、揃って外に出た。 大山が勝手口を施錠し、敷地の外に出たところで警官から声をかけられた。 「ちょっとよろしいですか。」 2名のうち、小柄で丸顔の警官が声をかけてきた。眉毛が濃く、童顔だ。 「五反田警察ですが、少しお話を聞きた…

【最終内覧①】(ヂメンシノ事件15)

6月1日は物件の最終的な内覧の日だった。 既に井澤は物件自体を2回見ていたが、今回の取引は現状有姿での引き渡しだ。つまり、売主は建物をそのままの状態で満水ハウスに引き渡す。満水ハウス側からすると建物には価値は無いし譲り受ける必要も無い。満水ハ…

【予兆】(ヂメンシノ事件14)

5月の中旬に入ると、問題が起き始めた。 篠原氏の名前で内容証明が本社に送られて来たのだ。内容証明には、満水ハウスが契約した篠原は本人ではなく、売買契約は無効だとの記載がなされていた。末尾には男性の名前も書かれている。息子のようだった。 本社法…

【売買契約②】(ヂメンシノ事件13)

仮登記に必要な書類は登記原因証明情報および登記義務者である所有者の印鑑証明書だ。不動産の登記は何の原因もなく自由にできるわけでは無い。当然に原因があるはずであり、それを証明するのが登記原因証明情報だ。 2004年の不動産登記法改正前は、登記原因…

【売買契約①】(ヂメンシノ事件12)

その後はトントン拍子に事が進んだ。 4月17日には平野の東京出張に合わせて物件の現地確認を実施した。ただし、これは社長車に真中が同乗し、立地・外観を確認するにとどめた。どうせ建物や庭は壊すのだから、中に入る必要はないからだ。平野も立地の確認で…