事実はケイザイ小説よりも奇なり

経済を、ビジネスを、小説を通じて学んでみる

【やるしかない】(ヂメンシノ事件11)

常務である真中の指示により、井澤の所属する東京マンション事業部は、五反田の海猫館への取得にすさまじい勢いで動いた。 真中からの平野社長宛の一報に始まり、土地の正式な物件調査、所有者および仲介者のコンプライアンスデータベースとの照合と続く。 …

【建築家と会長②】(ヂメンシノ事件10)

石橋に対する奥平のライバル心は凄まじかった。例えば、石橋が勲章を受けた時も「なぜ自分が貰っていないのだ」と怒り心頭だった。その後、様々な手を使って奥平が勲章を受けられるように手配したのは平野だった。所管省庁である国交省への働き掛けのみなら…

【建築家と会長①】(ヂメンシノ事件9)

日本の有名な建築家に堂安がいる。この建築家は国際的にも有名だ。 堂安建築といえば、コンクリート打ち放しのミニマルなデザインを思い浮かべる人が多いだろう。一般の人でも名前を知っている稀有な建築家なのだ。重厚感を感じさせる建築が特徴であり、個人…

【競合先】(ヂメンシノ事件8)

平野のデスクの電話が鳴った。 「社長。」 秘書の成田の声が響く。今日も活舌の良い声だ。無駄も一切感じられない。 「マンション事業本部の真中常務からのお電話ですが、取り次いでよろしいでしょうか。」 「ああ、繋いでくれ。」一瞬の沈黙がある。 「真中…

【来訪②】(ヂメンシノ事件7)

「まず、少し誤解があるかもしれませんね。篠原さんは、御社に完全に売ると決めた訳ではありません。他にもかなりの値段でお申し込みがある大手さんがいるんですよ。しかし、御社が有利なのは間違いありません。」 場が凍り付いたのが分かった。井澤の横で、…

【来訪①】(ヂメンシノ事件6)

真中と井澤が所有者である篠原と会ったのは4月の初旬だ。 仲介会社のSYODAホールディングスの生田社長が満水ハウスの東京オフィスを面談場所として指定してきたのだった。 満水ハウスの東京オフィスは新宿にある。JR新宿駅の一番近い改札口から歩いても5分は…

【海猫館②】(ヂメンシノ事件5)

平野が真中から聞いたところによると、この海猫館を買わないかとの話が持ち込まれたのは3月末頃だった。東京マンション事業部の部長の井澤が、ハジメからの紹介で地元に情報網を持つ不動産会社から情報を入手したのがきっかけだ。 すぐに井澤はマンション事…