事実はケイザイ小説よりも奇なり

経済を、ビジネスを、小説を通じて学んでみる

帝国銀行、人事部19

「ご質問頂いてありがとうございます。良い質問ですね」 田嶋は学生から質問が出る度に、このように伝えることにしている。質問しやすい雰囲気を作るためだ。 今の学生はSNSや就活サイトに何でも書き込む。印象が悪ければ、自分の名前が世の中にさらされかね…

帝國銀行、人事部18

ここは採用セミナー会場の片隅だ。田嶋は採用の手伝いで訪れていた。田嶋の目の前には数十人の学生が座り真面目にメモをしている。どの学生もいわゆるリクルートスーツで固めている。男性はネイビー、女性はチャコールグレーかブラックだ。個性を感じること…

帝國銀行、人事部17

山階が退出した会議室で田嶋は一人で天井を見上げていた。とにかく、今回は乗り切った。それだけだ。 今日も田嶋は面談後に本店に帰る。上司の伊東は、いつも遅くまで残っている。確かに忙しいのだろうが、人事部長が帰らない限りは帰らないという方が正しい…

帝國銀行、人事部16

「山階さんが言及されたのはあくまで地方裁判所レベルの判決です。最高裁で判決が出て、初めて日本全体でのルールが決まっていくのでしょう。当行としては、現行の人事制度および労働時間管理については問題が無いと考えています。でも私は貴店の担当です。…

帝國銀行、人事部15

「労働組合ですか」田嶋がやっと声を出す。 「そうです。私が管理監督者であることの理不尽さを教えてくれたのは、当行の労働組合の方ではなく、社外の金融機関の労働組合の方です。まだ加入はしていませんがね」 『やはり外部の労働組合だったか』田嶋は背…

帝國銀行、人事部14

三井倉庫港運事件(最高裁第一小法廷平成元年12月14日)という裁判例が存在する。人事関係者か労働組合関係者ぐらいしか知らないだろう。判決の要旨は次の通りだ。 「ユニオン・ショップ協定のうち、締結組合以外の他の労働組合に加入している者及び締結組合…

帝國銀行、人事部13

ユニオン・ショップとは、会社側が、労働組合との協定であるユニオン・ショップ協定を締結し、組合員ではないものを解雇する義務を負うことを内容とする制度のことを言う。単純に言えば、ユニオン・ショップ協定というのは企業内に会社が公式に認定する唯一…