事実はケイザイ小説よりも奇なり

経済を、ビジネスを、小説を通じて学んでみる

帝國銀行、人事部121

「二人きりで面談しているのは、どうしても私が知りたいことがあったから無理にお願いしたんです。教えて下さい。なぜ旧Yの皆を裏切ったんですか」 獣の唸り声のようなものが、伊東という人間の形をしたモノから発せられた。最初は少し高くかすれた泣き声の…

帝國銀行、人事部120

「お前、なにやってんだ」 「私も暇じゃないんですよ。でも、クビをかけて人事部長とコンプライアンス部長に直談判して、今回の一連の調査を認められました。伊東さんの横領事件裁判で、私の記録が証拠として認められるかは分かりません。そもそも、銀行とし…

帝國銀行、人事部119

「11月23日11時23分通話スタート。植北さん。仕事中に電話してきたら困りますよ。例の件、総務部内の協議は終わりました。だいぶ早いクリスマスプレゼントです。」 伊東の身体から立ち上る空気が変わったのが田嶋には分かった。 「11月26日16時13分通話スタ…

帝國銀行、人事部118

静かな会議室に伊東の笑い声が最初は小さく、徐々に大きく響いた。 「俺のスマホの画面が監視カメラに写っているだと。映像として撮られている可能性はあるだろう。それは否定しない。しかし、メールやLINEの文面が見えているとは思えない。証拠があるなら出…

帝國銀行、人事部117

「伊東さん。どうしても正直にはお話下さらないのですね」やっと言葉を紡いだ。自分ながら心が弱い人間だということが実感される。 「クソが。お前と話をする時間がもったいない。俺は何一つ責められる要素はない」伊東は興奮し、唇の左端からよだれが垂れて…

帝國銀行、人事部116

伊東の濃いグレーのジャケットの胸元が細かく震えている。興奮しているのだろう。そして、田嶋が手を置く机から急激な振動を感じた。一瞬、地震が起きたのかと思ったが、伊東の上半身が揺れているところを見ると、伊東は貧乏ゆすりをしているらしかった。貧…

帝國銀行、人事部115

田嶋の剣幕に驚きつつ、伊東が座る。伊東でもおとなしく人の言うことを聞くことがあるのだと、田嶋はふと思った。 「私が、何の証拠も無く伊東さんを告発すると思いますか。なぜ二人だけで話をしていると思いますか」 田嶋は涙らしきものが自分に込み上げて…