事実はケイザイ小説よりも奇なり

経済を、ビジネスを、小説を通じて学んでみる

帝国銀行、人事部58

田嶋のみならず、他の人事部メンバーも息をのんでいた。とうとうここまで来たのだ。田嶋の世代は銀行が倒産する時代を知っている。不良債権処理で厳しい環境を過ごしてきた。しかし、若い世代は銀行が潰れるとは思っていないだろう。何と言っても就職人気ラ…

帝國銀行、人事部57

ここまで一気に山中は説明した。原稿は見ていない。本気だ。会議室の雰囲気が急激に変わる。山中の声以外に一切音がしない。山中の発言が止まった瞬間に耳が痛くなるほどの沈黙が会議室を包んだ。 「分かるか。私は本気だ。そして頭取含め役員は本気になった…

帝国銀行、人事部56

田嶋がそのように考えていると、すぐに山中部長が話を始めた。 「お疲れさんです」山中は人事部長ではあるが、いわゆる官僚的な人物ではない。国内の法人営業畑で、幅広い人脈とシンパを持つ。身体は大きく、首は無い。いわゆるアメフト体型だ。自身は大学4…

帝国銀行、人事部55

10月上旬、下期の戦略会議が帝國銀行人事部の管理職を集めて行われた。単独の部であるにもかかわらず、合計すると100名は下らない。 9時から開始だった。10年前の人事部ならば8時や19時スタートというのもあり得た。しかし、今は人事部が率先して働き方改革…

帝国銀行、人事部54

山内が泣いたような目で田嶋を見つめる。 「田嶋君の手を私が握った写真を撮ったのは岩井支店長なの」 ふいに田嶋は現実の世界に引き戻されたような衝撃を受けた。 「え?」 「そう。私は裏切り者なの」 「山内さんは何を言っているの」 「聞いて。岩井支店…

帝國銀行、人事部53

翌日、岩井の人事異動が発表された。銀行の人事異動では理由は明かされない。その後、しばらくしてから岩井はパワハラで飛ばされたとの噂が流れた。それだけだ。尚、中野坂上支店から仙台支店に異動した稲垣は、しばらくしてから真島と結婚した。真島はその…

帝国銀行、人事部52

出勤すると伊東がすぐに会議室に来るように指示を出してきた。机からノートだけを取り出して、伊東の後を追う。いつもの殺風景な会議室に山中がいた。伊東が自然な形で山中の横に座る。田嶋は山中の目の前にテーブルを挟んで座った。今日の山中のネクタイは…