事実はケイザイ小説よりも奇なり

経済を、ビジネスを、小説を通じて学んでみる

帝國銀行、人事部74

ここまでのところは参加者が理解しているだろうか。田嶋は参加者の顔を確認したが、理解できていない担当はいないようだった。 「出張のための移動は会社の指示に基づくものであることは疑いがありません。そして移動中は飛行機や電車等に乗っていなければな…

帝國銀行、人事部73

勉強会開始は8時30分。アドバイザーという名のお目付け役は副部長の伊東だ。 「では、お手元に資料はありますでしょうか。今回は出張中の移動時間と残業について確認しておきます」田嶋は出席者を見廻し、問題がないことを確認した。 「出張は皆さんも普通に…

帝國銀行、人事部72

銀行の人事部担当は、法制度、判例の動向をかなり細かくチェックしている。油断すると法令違反に問われかねず、ブラック企業の烙印を押されることもあり得る。 この日は、人事部に異動してきて日が浅い担当者を集めての勉強会が開催されることになっていた。…

帝國銀行、人事部71

しばらく電話の向こうから音が聞こえなかった。沈黙だけが続いた。そのうち、猫の声のような音が少しずつ携帯電話から聞こえていることに気付いた。裕子が泣いていた。だんだんと鳴き声は大きくなり、数分続いた。田嶋は裕子が何を考えているか分からなかっ…

帝國銀行、人事部70

結婚したのは31歳の時だ。お互いに結婚を意識してはいたが、具体的な話はしていなかった。 しかし、田嶋は銀行員で、銀行員には転勤が付きものだ。付き合ってから1年も経たないある日、突然、支店長から呼ばれ、大阪の支店への異動を言い渡された。1週間後に…

帝國銀行、人事部69

地区を統括する部長の目にかない、入社4年目で賃貸アパートの営業となった。賃貸アパートの女性営業職は他社にもほとんどおらず、裕子はアパートのオーナー達からかなり可愛がられたようだ。複数棟の建築を依頼してくれ、さらに友人を紹介してくれたオーナー…

帝國銀行、人事部68

田嶋の妻は裕子(ゆうこ)という。大手ハウスメーカーの満水ハウスに勤めている。満水ハウスはプレハブ住宅の最大手で、主に戸建と賃貸アパートの建築請負が主な業務だ。二人の間に子供はいない。 裕子とは、社会人になってから知り合った。同じ年齢で恋愛結…